2020年2月20日木曜日

激動の法改正。続々と。


 今月4日、所有者不明土地等の問題に対応するため、土地の適正な管理等を所有者の責務とすることなどを盛り込んだ土地基本法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。
 施行日は、一部の規定を除き令和2年4月1日となっています。これにより、個人が保有する低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の、金100万円の特別控除は、令和2年7月1日から令和4年12月31日までの譲渡に適用されることになります。
 低未利用土地等=取引価値が低い土地の流通を活性化させる目的にて、譲渡対象土地等の未利用の条件、譲渡後の利用についても、市区町村長の確認が要件となります。(今後、明らかに・・・)
 土地基本法等の改正法案では、土地の所有者等に対して、土地の適正な利用や管理に関する責務があることを明確にします。登記等の権利関係や隣接地との境界を明確化するための措置を適切に講ずるように努めなければならないとし、筆界とは表記しない国交省条項となりました。
 また、地籍調査の円滑化・迅速化を図るため、新たな国土調査事業十箇年計画を策定するとともに、所有者探索のため、固定資産課税台帳等の利用を可能にする措置を導入します。
 相続登記申請の義務化、遺産分割に期間制限(10年?)を設ける制度の創設、所有者不明土地の管理に特化した土地管理制度の創設などが盛り込まれる見込みの民法・不動産登記法の改正法案は、令和2年秋に国会に提出されます。

2020年2月14日金曜日

狭あい道路拡幅整備の研修参加報告


 令和2年2月10日、東京千代田区麹町にて、地域科学研究所による、課題の先駆自治体にみる整備計画づくりと推進実務を、小生一名にて受講してきました。
 10時より16時30分迄、全国の行政担当者30名余と地方議員が参加し、過日、あいち境界シンポジウムにパネラーとしてご参加いただいた株式会社首都圏総合研究所代表の井上隆氏による建築基準法そのものの解説から実態、全国的な行政の問題点の講義より、始めていただきました。
 指定道路台帳整備として、行政側手持ちの現状の全ての道路を、指定の種類、指定年月日、指定道路の位置、延長及び幅員を公告する台帳情報を、平成21年より整備に取り組む世田谷区の状況は先駆的なもので、国の同年度に創設された「狭あい道路整備等促進事業」を上手く利用されているよう。
指定道路図、調書を、法に基づく閲覧対象図書として位置付け、一般の方へも窓口公開までされており、私人の権利義務に深く関係する、いわばハザードマップが出来上がっています。
 当然、東京23区内の土地取引には、多くの区が自主的に作成するこの調書等が利用されており、愛知県内、例えば名古屋市のように道路整備の進んでいる都市では考えられないくらいに、位置指定道路や私道といった狭あい道路以前の劣悪な接道の報告を、続く練馬区、足立区、都内23区の西側に接する武蔵野市の3者より伺うこととなりました。
 井上氏は、杉並区、横浜市が近年改正した条例を用いて、相当に強い行政の意思をもって解消に取り組んでいる実情と共に、大阪市、名古屋市の限られた対象区域に限った要綱による事例、更には大阪、法善寺横丁の連担建築による建替ルールによる再生等のレアケースについても触れられました。
 京都の祇園町の歴史的細街路、東京都中央区月島の3項道路に、道路後退を緩和してでも、兎も角、古い木造家屋を建て替えてもらうよう、誘導していかざるを得ない密集地は、全国的にも多くみられるといいます。
 時間が足りず、井上氏の講義は、当日は尻切れトンボ。
是非、長編で再度伺いたいと思います。

1.自治体の報告。練馬区の実情。正直、住みたいとは思えない不接道宅地だらけ。2項道路どころか、43条1項但書による、仕方無いから許可する2.7m。3.6m幅員で条件を緩和しても、3.6mにすら拡幅に応じない地権者のワガママを許容するといった有様だが、上述のように、まずは耐震建物に建て替えてもらうことを優先せざるを得ない既存密集低層住宅だらけの74万人区。
 区内の4m以下道路率も36.9%・・・・。ドン突きの位置指定道路を出来る限り建築可としている有様に驚かされました。

2.足立区。現在人気第3位の住みたい区。北千住、犯罪が多いとレッテルを貼られた西新井警察管区・・・・マスコミのでっち上げだそうです。しかし、日光街道(国道4号線)沿いの千住宿の古い街並みには、無接道家屋が7000棟?!
 細街路と呼称した狭あい解消事業は、都内でもかなり業績を上げてはいるようです。
この建築室開発指導課長さんがなんと、足立区内の細街路整備は東京土地家屋調査士会足立支部のみなさんの営業活動なくしては、とても進められるものではない…と報告されたのです。
 区役所職員は、どのような整備をするのか。後退ラインをどうするのか。L字溝等をどう施工するのか、といった対応に追われる中、調査士が地権者や隣地へのアプローチも全て対応しているとのことでした。
 是非一度、実際の活躍ぶりを取材してきたいと思いました。

3.武蔵野市。これまた、開いた口がふさがりません。
 全市内の道路の内、7割が私道だそうです。ほぼ全て、幅員にかかわらず、市が管理しています。
 狭あい道路拡幅整備のやり方に、他にはない幾つものアイデアが活かされていました。

 3ヶ所共、まずは防災、減災の観点から、4m以上の公道からなんとか消防車のホースが届く100m以内にメッシュをきって、出来るところから狭あい解消を長期的に行っていくという東京都事情を共通の考えとして、各行政が取り組み、なんとか最小限に首都直下型震災の発生時被害が抑えられないか・・・・と語られるも、土地地価の高さ故に、スピードの上がらない土地所有者の非協力という実状が記憶に残る研修会でした。

2020年2月12日水曜日

筆持活用の新たなメニュー


 土地基本法の改正案が、国会で審議されています。
 かつて、バブル崩壊した平成の始め。土地の投資対象の財ではなく、利用して初めてナンボのものとした同法を、今回は土地所有者に対し、利用だけではなく応分な管理責任を負担してもらうという主旨の改正をすすめます。
 土地は、投機的取引の対象としてはならない(現行4条)に、円滑な取引等として、『土地は、土地の所有者又は土地を使用収益する権原を有する者(以下「土地所有者等」という。)による適正な利用及び管理を促進する観点から、円滑に取引されるものとする。』と、うたわれます。
 そして、新設第6条第2項にはこの条項が入ります。
『(土地所有者等の責務)土地の所有者は、前項の責務を遂行するに当たっては、その所有する土地に関する登記手続その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならない。』
 矢張り、国交省の法律条項なので、筆界ではなく境界の明確化です。
 更に、第13条第1項では・・・
『国及び地方公共団体は、前条第一項の計画に従って行われる良好な環境の形成又は保全、災害の防止、良好な環境に配慮した土地の高度利用、土地利用の適正な転換その他適正な土地の利用及び管理の確保を図るため、土地の利用又は管理の規制又は誘導に関する措置を適切に講ずるとともに、同項の計画に係る事業の実施及び当該事業の用に供する土地の境界の明確化その他必要な措置を講ずるものとする。』

 国土調査促進特別措置法の改正案の中で、第7次十箇年計画がうたわれます。
第3条第2項
『国土調査事業十箇年計画は、土地基本法(平成元年法律第八十四号)第二十一条第一項の土地基本方針に即し、かつ、防災に関する施策、社会資本の効率的な整備に関する施策、都市の健全な発展と秩序ある整備に関する施策その他の関連する施策との連携が図られるとともに、国土調査事業の迅速かつ効率的な実施が確保されるように定めなければならない。』
 今度は、国土調査法の改正条文です。
第22条の2(街区境界調査成果に係る特例)
『~中略~ 事業計画に基づいて地籍調査を行う地方公共団体又は土地改良区等は、当該地籍調査を効率的に行うため必要があると認めるときは、一の街区(住居表示に関する法律(昭和三十七年法律第百十九号)第二条第一号に規定する街区をいう。以下この項において同じ。)内にその全部又は一部が所在する一筆又は二筆以上の土地(当該街区外にその全部が所在する土地(以下この項において「街区外土地」という。)に隣接する土地に限る。)について、その所有者及び地番の調査並びに当該一筆又は二筆以上の土地と街区外土地との境界に関する測量のみを先行して行い、その結果に基づいて地図及び簿冊を作成することができる。』

 この関連法案改正として不動産登記法第131条2項が新設されます。
『地方公共団体は、その区域内の対象土地の所有権登記名義人等のうちいずれかの者の同意を得たときは、筆界特定登記官に対し、当該対象土地の筆界(第十四条第一項の地図に表示されないものに限る。)について、筆界特定の申請をすることができる。』
 この条項の解釈としては、市町村が地籍調査を行う場合に限定されるのか、公共事業用地の買収時に、対象土地の隣地土地との筆界特定迄、広範囲に申請ができるのか、まだはっきりしていません。
 測量コンサル業界として、まさか、市町村の発注をうけ、筆界特定申請を業として受注できるとは思えません。
 土地家屋調査士が、先ずはその申請を代理できるとする回答は、民事局としても、返してくれるとは察します。
 公嘱協会が代理して行う。業務として随意契約、公共調達がなしうるものか。ゆっくりと試行していただけるよう市町村へのアピールを、法務省より発せられるのをお待ちしましょう。

2020年2月3日月曜日

新人研修会

 1月31日から2月2日。名古屋城南、三の丸会館にて、毎年開催してきた愛知会立会研修を1日拡大し、中部ブロックの他の5会からの参加者を加え、44名の新人さんにしっかり研修体験をしていただきました。
 26才の愛知会員。元名古屋市内の登記所長経験者の60代の北陸会員。様々な年齢層の方に、幅下公園において、立会実務もぶっつけ本番で学んでもらいました。
 K.誠委員長が、想定しえない、公園の地面に引いた筆界線を、某会長が微妙にずらします。鋲の位置を跨いで、構築物に模した木杭等を越境した状態へとずらします。
 前日に現地を事前踏査した新入会員にとって、ふって沸いた状況です。
 耕地整理寸法と現地鋲(既存境界標識)のズレを説明することくらいと思っていた受講者のみなさん、ゴメンナサイ・・・。
 しかし、越境に関して何のコメントも返せない、31名の愛知の新人さん。
 非弁活動、弁護士法第72条に抵触するような和解・仲裁行為はこわいですよね。建前と本音、売買用の確定測量、街中の建築敷地測量にあって、最低限の越境状態を、依頼者と隣地所有者に解説をしないで境界位置を示すことはサギ!?です。

塀が出ていたら、軒先が跨いでいたら、隣地の方から後日、「説明がなく入れた杭は認められない!直ちに抜いてくれ。」と怒声が届きます。この会長の部屋は、全国の同職、更には国民のみなさんに公開しています。ご意見をいただくつもりです。
 
 明日から、参加された新人さんも、自己責任で業務を受注します。
 待ったなしです。
 新人に限らず、真剣勝負です。報酬をいただく工夫の前に、学んでいただく必須項目です。