2023年3月27日月曜日

4月27日受付開始;相続土地国庫帰属法

 全国50ヶ所の法務局本局に審査窓口が設置され、2月末から事前相談で問い合わせをされる方は、かなり多数。本人申請が原則にて、士業の代理人は認められていないところ、書類作成の支援は、弁護士、司法書士、行政書士に限定され、当初、私 伊藤直樹が、強く関与すべき資格者として土地家屋調査士が選ばれるものと期待していたところ、アテがはずれました。

 土地家屋調査士は法務省資格です。今回、法律の対象は土地であり、土地の総合コンサルタントとして創設73年の歴史が、親元の法務省民事局によって切り捨てられたものと、とても残念な想いでいます。勿論、私共あいち事務所は、相続の専門家としてこの法律に対応し、司・行資格で申請審査のお手伝いを100%貫徹していきます。・・・が、この法律に拠って、国が、帰属を受けた後の管理は(例えば愛知県では東海)財務局に移るのですから、確定測量図もない市街地の更地(サラチ)について、隣接土地所有者は、黙ってみのがすのか?…と思っていたところ、令和5年1月13日、この法律の法務局に於ける具体的な手続を定めた規則が公布され、その第13条に目を見張りました。

 境界が明らかでない要件を、この帰属申請では却下事由として、法律の冒頭に定めています。境界に争いのある土地は、申請しても門前払いになることが定められているのです。

 =『筆界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲について争いがある土地』は、絶対に却下されるのです。

 規則第13条では、申請を受付た法務局の担当者(これまで土地家屋調査士が毎日のようにお世話になっていた表示登記の登記官さん達です)は、境界点で接する全ての隣接土地所有者に対して、隣接地所有者通知を郵送し、境界について異議がないかどうか、2週間の期間内に回答することを求め、異議があるとチェックした返信が返ってくると、その承認申請は却下されるのです。

 この法律を作られた法務省の方々は、農地や山林はいざ知らず、街の宅地の境界について、杭も測量資料も何もないという郵送物が法務局から送られてきて、「私は、お隣の相続された土地承継者はどなたか知りませんが(挨拶もないままに…)、境界について、杭も測量図も何もないけれど、異議なくご承認いたします!」と、もれなく返送されてくると想定しておられるのでしょうかね。

 自分は、実は今、この土地家屋調査士業界の全国組織・連合会会長に立候補しています(6月21日開票)。結果はともあれ、この土地家屋調査士業界16000名は、指をくわえて、この先、法務局の混乱を看做できません。

 是非、確定測量図を土地家屋調査士に作成依頼した上で申請し、審査は受けてください。

 間違いなく、法務局から財務局に帰属完結出来ます。

 

 

 これは、私自身が地元にて30年間発信している、事務所のミニコミ誌の春季号に掲載した記事全文です。

 相続土地国庫帰属法は、所有者不明土地問題の一環として施行され、相続登記義務化と共に、相続承継者に、土地を所有することの義務を果たすべきことと求め、本心、承継したくないなら、必要な経費をかけて帰属=物納することを、強く、初めから規定すべきだと、なぜ法務省は法整備されなかったのでしょうか?

 なぜ、私達の代表・連合会は、この法律施行前に「測量に基づく確定測量図や地積測量図を添付する必要はなく、あくまで承認申請者が認識する所有権界を示せば足りる」などという規定を排除させる努力をしなかったのか。

 言い過ぎでしょうか???

2023年3月25日土曜日

帰属省令、公布

 令和5年1月13日に相続土地国庫帰属法の施行規則が公布されました。同法、同法施行令の施行日、本年4月27日から運用が始まり、各法務局(本局)の窓口で、どんな状況になるか注目です。

 残念乍ら、承認申請の書類作成代行は親族や一定の資格者が行うとされ、弁護士、司法書士、そして行政書士に限られ、帰属制度における専門家の活用について案内されている法務省HPの文面には、尚書にて、土地の所在や境界に不明瞭な点がある場合など、申請に先立って、土地の筆界に関する専門的知見を有する土地家屋調査士に相談することができる・・・と記されています。

 弁、司、行は太字で表示されているにもかかわらず、調は細字にて、強調はされておらず、法務省資格である事に、フト、不安を覚えます。

 法第2条第3項の却下事由1〜5の内、5の「筆界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地」という表現は、どこまでの門前払いとなるのか否か、今回の省令の中で読み取れるのか否か。

 添付書類としての図面は、測量に基づく確定測量図や地積測量図を添付する必要はなく、あくまで承認申請者が認識する所有権界を示せば足りると表現されています。 

 境界点を確認するための写真の添付が求められていますが、隣地との所有権界を示せば、筆界点についての復元測量は不要。厳密な座標値を記載する必要もない。

 但、承認申請時のみならず、国庫帰属時も判別可能なものである必要があり、→境界標、ブロック塀又は道路のヘリ等、地物、地形、又は簡易な目印(紅白ポール等)によって、継続的に判別できるものであれば良い。

 この承認申請を、この資料でもって、法務局の登記官のみなさんが審査し、問題なしとして、各法務局より各財務局(+地方農政局又は森林管理局)に、国庫帰属移管する嘱託登記は職権にて行われるか、公嘱司法協が手を挙げられるのか、将来の件数によることでしょう。

 

 さて、注目すべき第13条について、ふれてみます。

境界が明らかでない要件を確認するため、法務局から、「境界点」で接する全ての隣接地所有者に対して隣接地所有者通知を発し、境界に異議がないか照会をかけるようです。

 異議がある場合には、2週間の期間内に回答をすることを求め、異議があったら、承認申請は却下されるというのですが、この部分を法務省では、施行通達で通知の詳細、及び、様式を定めておられますが、本気で、測量をすることなく、面識のない隣の人が相続を機として国に引き取ってもらうから、境界に異議はありませんと「異議はない」旨の回答が返信されてくると想定されたのでしょうか?

 その後、通知が届かなかった場合、法務局の担当者が、隣接地所有者や近隣住民等に実地調査をするとしています。このような現地入りをされる法務局担当者は、当然に表示登記官のみなさんとなり、そのお手伝いを民間側で土地家屋調査士がお手伝いするような舞台は、現時点では用意されていません。

 是非、4月27日以降の運用の中から、土地家屋調査士の活用を法務局審査面から、相続人のみなさんにお伝え出来るよう、業界として取り組むべきかと考えています。

 連合会は、この帰属法の円滑利用が為、出来ることから国民へのアピールを行えば、却下事由を回避していただける受け皿として、土地家屋調査士は注目いただけます。いただけるのです。

 地元、名古屋法務局の担当者の方々、そして愛知会のみなさん、更には覗いていただいている全国の土地家屋調査士のみなさん。

 業界とは、国民のニーズに私達から寄り添うことに全力投球する組織。

 違いますか?

2023年3月9日木曜日

連合会、岡田会長等による月刊誌への寄稿等について思う

 先の登記研究(テイハン)900号記念号(2023年2月号)に、現在の連合会会長を務められる岡田潤一郎様が、私達の業界をエネルギッシュに分析された、20頁以上にわたる長文を出稿されました。

 又、同じく法務行政に関する2大月刊誌である登記情報(キンザイ、2023年3月号)において、法務省民事局民事二課の方々と、岡田潤一郎連合会会長、鈴木泰介連合会副会長、又、前連合会役員であられた内野篤様等による座談会記事が掲載されました。

 前稿は「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として土地家屋調査士が選択され続けるために」。

 後稿は「表示登記における筆界確認情報の指針を踏まえた今後の実務」。

 いずれも、全国16200名余の会員が必読すべき内容であり、僭越乍ら、私が概要を、私見ではありますが、紹介させていただきます。

 岡田連合会会長は、13年前に誕生した私達の制度が、今日に至る迄、幾度かの法改正を経て、時代と社会の変革に対応してきた歴史を冒頭につづられ、特に平成14年改正の法第25条第2項、地域の慣習の重要性、平成17年改正のADRへの参画を隣接法律専門職として活躍の場を確保したと記されました。

「筆界」の文字が登記法の中に表現された事実が、市民生活における安心と安全、防災と減災というカテゴリーに歩を進めた瞬間と捉えられています、との文面に…私見を少々はさみます。民間紛争解決手続代理関係業務は、弁護士との共同代理申請を行うものです。決して独立した隣接法律職能者としての活動は出来るものではありません。この点は、平成17〜18年当時、岡田会長も私も、同じ連合会理事として、このADRの限界について認識されていた立場であったと思います。

 ADR申立を、私が愛知会会長の任にあった4年間で、年に2桁までの件数へと伸ばす為、愛知県弁護士会から推挙いただいたセンター委員長等に汗を流していただきましたが、これは独自に土地家屋調査士が活動したのではなく、弁護士の先生方に目一杯、動いていただいた成果でした。

 全国的に隣接法律専門職という言葉を用いる役員さんがまだおみえですが、法務省において、法曹界においても、土地家屋調査士として、隣接云々とは取り扱われていない事を再認識すべきではないかと、私は考えます。

もう一度記します。残念乍ら、弁護士さんから隣接とは評価されていないのです。

 自分達を卑下したり、ADR参画を消極的に捉えるつもりはありませんが、内側だけでステップアップ出来たと言うだけでなく、実質の成果をあげる事に力を入れない限り、国民から隣接法律専門職として正式に認められないでしょう。

 現在のADRへの取り組み状況では、外からの認知はありえない。であれば、連合会でどのように実績づくりをしていけば良いのか、英智を集めたいですね。

 このままで良しとしていては、いけないと思います。

 

 さて、先の法改正によって使命規定が誕生をしたくだりを、岡田会長が詳細に説かれた文面の中で、広く国民の皆様と社会からのニーズが拡大していくものと考えている、という言葉には深く共鳴します。

 であれば、より社会のニーズがどこにあるのか、どう拡がっているのかを、連合会こそがアンテナを高くして情報収集する仕事を実行しなければならず、その点は、自身も連合会役員に名を連ねていた間に十二分に果たすことが出来ないまま、今、在野にいるあたり、不甲斐ない。

 

 令和3年4月23日、日調連発第32号の照会に対する民事第二課長回答は、当時の國吉正和会長のタイムリーな問いかけでした。この照会回答に、1.趣旨、2.検討、3.結論が紹介されています。解釈の幅という表現にて、法令で認められる業務と、認められない業務との区別に言及されていますが、社会のニーズが前提で拡大する中で、土地家屋調査士の業務領域は、連合会から率先して拡く解釈するリードがあっていいと、私は感じています。

 この「解釈の幅」は、キンザイの筆界確認情報の指針座談会においても、法務省サイドから、所有者不明土地問題の解消の一環として、運用面で壁を取り除かれようとの発信がされ、これを全国の土地家屋調査士がどう受け止めるのかが、今後問われることになりましたが、そこでもあてはまるのではないでしょうか。

 そして、この筆界確認書を隣人からとりつける事を一部略すことは、あくまで登記が不能とならないように運用するものであって、実際の相隣関係において、立会・了解の得られない境界ラインでは、土地の安心安全な取引や、建物の外構工事が執り行えないことは、どなたでもわかっている筈。

 鈴木副会長が、境界確認書至上主義者と座標値絶対主義者という表現を用いられています。今の不動産取引の中で、どこまで今回の指針を解釈していくのか。座標値があったとしても、永久境界標識の設置に対する了解は必要であり、国民は杭をもって安心して生活されているのです。

 

 この座談会において、令和3年10月7日に朝日新聞が掲載された記事に対するコメントはされていません。

ご存知ない方のため、標題と記事抜粋を転記します。

「隣の土地誰のもの? 境界確認なくても売買可能に、来春開始を目指す。」土地を売買するには、対象の土地の範囲を確定させて登記する必要があり…「筆界確認書」の提出を求める運用が定着しており、境界確認の有力な根拠としている…そこで法務省が検討中の案では、国が全国で整備を進めている境界の地図や、精度の高い測量図の活用を想定。…確認書は不要とする。所有者が判明しない場合には、地図や測量図がなくても、以前の所有者のときに作成された確認書でも利用できるようにすることも盛り込まれました。

日刊紙の記事であり、記者の認識は、標題の如く読者へのアピールなのでしょうが、その後日経新聞にも同様な単発記事が掲載されており、この不要話の一人歩きは、連合会によって消火活動のひとつでも必要ではないかと、今でも危惧しています。

 

 アドバルーンを挙げられるのは連合会だけです。

水道橋がオピニオンリードを果たさなければいけません。

法務局、登記行政側、関連月刊誌の船に乗らせていただくだけではなく、国民に土地家屋調査士の有用性、今後どのようなニーズに対応できる業界であるのか、他力本願ではなく、発信する・打ち鳴らし続ける連合会であって欲しいと私は思っています。

 以上、決して批判をアップするような思いのない事を最後に、この章を終えます。