2023年3月9日木曜日

連合会、岡田会長等による月刊誌への寄稿等について思う

 先の登記研究(テイハン)900号記念号(2023年2月号)に、現在の連合会会長を務められる岡田潤一郎様が、私達の業界をエネルギッシュに分析された、20頁以上にわたる長文を出稿されました。

 又、同じく法務行政に関する2大月刊誌である登記情報(キンザイ、2023年3月号)において、法務省民事局民事二課の方々と、岡田潤一郎連合会会長、鈴木泰介連合会副会長、又、前連合会役員であられた内野篤様等による座談会記事が掲載されました。

 前稿は「不動産の表示に関する登記及び土地の筆界を明らかにする業務の専門家として土地家屋調査士が選択され続けるために」。

 後稿は「表示登記における筆界確認情報の指針を踏まえた今後の実務」。

 いずれも、全国16200名余の会員が必読すべき内容であり、僭越乍ら、私が概要を、私見ではありますが、紹介させていただきます。

 岡田連合会会長は、13年前に誕生した私達の制度が、今日に至る迄、幾度かの法改正を経て、時代と社会の変革に対応してきた歴史を冒頭につづられ、特に平成14年改正の法第25条第2項、地域の慣習の重要性、平成17年改正のADRへの参画を隣接法律専門職として活躍の場を確保したと記されました。

「筆界」の文字が登記法の中に表現された事実が、市民生活における安心と安全、防災と減災というカテゴリーに歩を進めた瞬間と捉えられています、との文面に…私見を少々はさみます。民間紛争解決手続代理関係業務は、弁護士との共同代理申請を行うものです。決して独立した隣接法律職能者としての活動は出来るものではありません。この点は、平成17〜18年当時、岡田会長も私も、同じ連合会理事として、このADRの限界について認識されていた立場であったと思います。

 ADR申立を、私が愛知会会長の任にあった4年間で、年に2桁までの件数へと伸ばす為、愛知県弁護士会から推挙いただいたセンター委員長等に汗を流していただきましたが、これは独自に土地家屋調査士が活動したのではなく、弁護士の先生方に目一杯、動いていただいた成果でした。

 全国的に隣接法律専門職という言葉を用いる役員さんがまだおみえですが、法務省において、法曹界においても、土地家屋調査士として、隣接云々とは取り扱われていない事を再認識すべきではないかと、私は考えます。

もう一度記します。残念乍ら、弁護士さんから隣接とは評価されていないのです。

 自分達を卑下したり、ADR参画を消極的に捉えるつもりはありませんが、内側だけでステップアップ出来たと言うだけでなく、実質の成果をあげる事に力を入れない限り、国民から隣接法律専門職として正式に認められないでしょう。

 現在のADRへの取り組み状況では、外からの認知はありえない。であれば、連合会でどのように実績づくりをしていけば良いのか、英智を集めたいですね。

 このままで良しとしていては、いけないと思います。

 

 さて、先の法改正によって使命規定が誕生をしたくだりを、岡田会長が詳細に説かれた文面の中で、広く国民の皆様と社会からのニーズが拡大していくものと考えている、という言葉には深く共鳴します。

 であれば、より社会のニーズがどこにあるのか、どう拡がっているのかを、連合会こそがアンテナを高くして情報収集する仕事を実行しなければならず、その点は、自身も連合会役員に名を連ねていた間に十二分に果たすことが出来ないまま、今、在野にいるあたり、不甲斐ない。

 

 令和3年4月23日、日調連発第32号の照会に対する民事第二課長回答は、当時の國吉正和会長のタイムリーな問いかけでした。この照会回答に、1.趣旨、2.検討、3.結論が紹介されています。解釈の幅という表現にて、法令で認められる業務と、認められない業務との区別に言及されていますが、社会のニーズが前提で拡大する中で、土地家屋調査士の業務領域は、連合会から率先して拡く解釈するリードがあっていいと、私は感じています。

 この「解釈の幅」は、キンザイの筆界確認情報の指針座談会においても、法務省サイドから、所有者不明土地問題の解消の一環として、運用面で壁を取り除かれようとの発信がされ、これを全国の土地家屋調査士がどう受け止めるのかが、今後問われることになりましたが、そこでもあてはまるのではないでしょうか。

 そして、この筆界確認書を隣人からとりつける事を一部略すことは、あくまで登記が不能とならないように運用するものであって、実際の相隣関係において、立会・了解の得られない境界ラインでは、土地の安心安全な取引や、建物の外構工事が執り行えないことは、どなたでもわかっている筈。

 鈴木副会長が、境界確認書至上主義者と座標値絶対主義者という表現を用いられています。今の不動産取引の中で、どこまで今回の指針を解釈していくのか。座標値があったとしても、永久境界標識の設置に対する了解は必要であり、国民は杭をもって安心して生活されているのです。

 

 この座談会において、令和3年10月7日に朝日新聞が掲載された記事に対するコメントはされていません。

ご存知ない方のため、標題と記事抜粋を転記します。

「隣の土地誰のもの? 境界確認なくても売買可能に、来春開始を目指す。」土地を売買するには、対象の土地の範囲を確定させて登記する必要があり…「筆界確認書」の提出を求める運用が定着しており、境界確認の有力な根拠としている…そこで法務省が検討中の案では、国が全国で整備を進めている境界の地図や、精度の高い測量図の活用を想定。…確認書は不要とする。所有者が判明しない場合には、地図や測量図がなくても、以前の所有者のときに作成された確認書でも利用できるようにすることも盛り込まれました。

日刊紙の記事であり、記者の認識は、標題の如く読者へのアピールなのでしょうが、その後日経新聞にも同様な単発記事が掲載されており、この不要話の一人歩きは、連合会によって消火活動のひとつでも必要ではないかと、今でも危惧しています。

 

 アドバルーンを挙げられるのは連合会だけです。

水道橋がオピニオンリードを果たさなければいけません。

法務局、登記行政側、関連月刊誌の船に乗らせていただくだけではなく、国民に土地家屋調査士の有用性、今後どのようなニーズに対応できる業界であるのか、他力本願ではなく、発信する・打ち鳴らし続ける連合会であって欲しいと私は思っています。

 以上、決して批判をアップするような思いのない事を最後に、この章を終えます。