●令和4年3月22日 国交省の公示地価発表(国土交通省土地鑑定委員会)
住宅地、商業地ともに、全国平均で2年ぶりに上昇へ
東京圏、そして名古屋圏は商業地の上昇。大阪圏は依然横ばい。
○住宅地は、低金利環境の継続、住宅取得支援施策による下支え
○都市中心部の希少性が高い住宅地(東山線沿線)や
交通利便性に優れた住宅地(名古屋駅西口至近)の
上昇、生活スタイルの変化→需要者ニーズの多様化
○地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)の上昇率拡大
×国内外の来訪客(インバウンド等)が回復していない地域や、飲食店舗等が集積する地域では下落
×都市中心部では、オフィス需要に弱い動きのみられる一部地域がある
尚、公示地価は別称として「地価公示、公示価格、標準価格、標準地価格」とも呼ばれています。
国税庁が毎年7月に公表する相続税、贈与税等における土地等の評価額の基準となる路線価は、地価公示価格(…毎年1月1日時点の評価)を基に算定。
※1969年施行の地価公示法→相続税法
他に、国土利用計画法に関連して、毎年9月には、各都道府県により基準地価が公表されます(…毎年7月1日時点の評価)。
●最新の路線価は、国税庁の「財産評価基準書、路線価図、評価倍率表」によって確認。
令和4年1月1日から12月31日迄に亡くなった故人の土地の相続税申告評価は、7月1日頃公表の路線価等によって算定。
●毎年4月初旬には、各市町村(名古屋市は、栄・ささしま・金山の3市税事務所)から、固定資産税の請求書がお手許に送られてきます。
固定資産税路線価は、市町村の税務課が地方税法に拠って定め、土地は3年に1度、評価替えが行われます。(令和3年の次は令和6年です)
→ この路線価は、固定資産税、都市計画税、そして、県税事務所から、土地等を購入した際、約3ヶ月後に自動的に買主に請求書が届く、不動産取得税の算定に用いられます。
※ 一般社団法人 資産評価システム研究センターによる「全国地価マップ」で、全国津々浦々の評価が確認できます。
最初の公示価格は、国が決定する都市部の土地の価格であるのに対し、基準地価は、都道府県が決定する、都市以外も含む土地の価格となります。
つまり、公示価格の対象外の農地・山林なども含まれます。
公示地価≒基準地価 〜100
相続税路線価 〜80
固定資産税路線価 〜70
◎ 実際の不動産売買の実勢価格
〜60〜200?+α
地元名古屋では、30年前に暴発したバブル以来の地価高騰が、一部都心でおきています。実勢価格は公示価格とかけ離れて、高いことも、又、安いこともあります。
しかし、親族間等で、あまりに安く土地取引をすると、管轄税務署から、みなし贈与として、贈与税が課せられることがあります。
この場合の基準は、相続税路線価です。
納税義務を免れる行為や、納税額を大幅に削減する行為は「相続税法第7条」にて、取り締まられます。
〜第7条
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価を該当譲渡があった時における当該財産の時価(当該財産の評価について、特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には遺贈)により取得したものとみなす。〜
●令和4年4月19日最高裁は・・・・
事案は、平成24年6月に94歳で亡くなられたAさんの相続人(妻、子供3名+二男の子(孫)を養子にし、計5名)が行った相続税ギリギリ対策。
管轄税務署、課税当局は、相続人に2億円以上の追徴課税処分をしましたが、これを不服として納税者は上告し、争い続けてきました。
被相続人は、平成21年1月と同年12月に
A 東京都杉並区の一棟マンション 8億3700万円
(借入6億3000万円)
B 川崎市内の一棟マンション 5億5000万円
(借入3億7800万円)
(妻から4700万円借りる)
合計 13億8700万円で購入
4年もたたずに相続発生。遺言により、この2棟は借入債務と合わせて、孫養子が一人相続。
彼は、約9ヶ月後に、川崎市内のマンションを5億1500万円で売却し、10億円の借入返済に充てました。
その他財産も含め、相続人5名は平成25年4月迄に相続税を申告しました。
A、Bのマンションについては、教科書通り財産評価基準通達に定められたように、土地については路線価を用います。建物も固定資産税評価額です。
A 土地 1億1400万円
建物 8600万円 /小計2億円
B 土地 5800万円
建物 7600万円 /小計1億3400万円
合計 3億3400万円
これは、小規模宅地特例を適用する前の評価ですが、それでも10億の負債と通算するとマイナス6億6600万円・・・相続税:零です。
賃貸の一棟マンションですから、土地は貸家建付地85%、建物は借家として70%評価です。
サァ、国税当局は、路線価による、これら評価は著しく不適当だとして、この申告は認めません。
平成28年。独自に不動産鑑定評価を行い更正→3億3000万円の追徴課税です。
不動産鑑定
A 7億5400万円
B 5億1900万円
12億7300万円…申告評価の約4倍!!
相続人は、平成29年に更正の取消を求め、東京地方裁判所に訴えます。
判決は棄却・・・、高裁も同じく棄却されました。
↓
「路線価による評価は否認、鑑定評価額による評価が相当」
財産評価基本通達 総則第6項の適用
〜この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
国税当局は、
「本事案はあからさまな相続税対策であり、本来課税されるはずの財産まで課税を免れようとした。これでは納税者の間で不公平になると判断。」
〜 融資をした信託銀行の社内文書に、相続税対策でA、Bマンションを購入すると記載していた。
〜 孫養子は、相続税申告提出前に、Bマンションを売却した。
〜 この5名の相続人は、このA、Bマンション以外に自宅不動産や有価証券をあわせると7億円ほど遺産を相続しており、借入金残の10億円が引かれる事により、基礎控除、債務控除、葬式費用控除により、見事・・・相続税0でした。
●路線価否認判決(地裁、高裁)からの最高裁4月19日は、どうなったのでしょうか?
→ 結果、納税申告者の上告は棄却。路線価の評価ではアウト。
今後の影響を追いかけます。