2018年12月25日火曜日

保管登記官



自筆証書遺言(民法968条)は、416ヶ所の法務局(本局50、支局261、出張所105)にて、平成32年(2020年)7月10日(金)から、保管官がお預かりします。



 封筒に入っていない状態で、作成者本人の確認をして、磁気ディスクにファイリングします。

 相続登記の促進と、所有者不明土地問題の解決の一助となることが考慮されています。



 遺言者が死亡している場合に限り、遺言情報証明書の交付が請求でき、自己が関係相続人等に該当することを証明して、遺言書の閲覧を請求することができます。遺言執行者も証明書の交付請求ができます。

 重要なのは、遺言書保管官が証明書を交付、又は閲覧させた時には、その他の遺言者の相続人、受遺者及び遺言執行者に対し、保管している旨を通知するというルールです。死亡した事実、通知先の把握、そして速やかに通知する仕組みは画期的です。

 この情報証明書とは別に、遺言書保管事実証明書の交付が、死亡していれば請求できます。逆にいえば、関係遺言書が保管されていない旨の遺言書保管事実証明書が交付されることもある訳です。

民法1004条による自筆証書遺言書の家裁による検認は適用除外となり、又、若干の手数料(適切な額が定められるとのこと)

 遺言について、イギリスでは、聖職者の面前にて、臨終の際、懺悔(ざんげ)のプロセスの一部とされ、罪を赦す前に魂の救済のため、その財産の一部を教会や貧しい人々に寄付する遺言を遺すことを進めていたといいます。

「Intestacy」=「無遺言死亡」~遺言を遺さずに死亡することは、魂の救済を受けずに死ぬことを意味し、聖地への埋葬不可。財産を領主に没収される、不名誉且つ忌むべき深刻な事態であったとのこと。2014年10月のイギリス弁護士会の報告によると、55歳以上の者の64%が遺言書を作成しているとされています。(by 民事月報 P3遺言大国より引用。民事局 竹下慶氏)



 あいち事務所では、公正証書遺言の作成を、ほぼ均一料金25万円セットで現在も推奨しています。今後、法務局の遺言書保管官が外形的な自筆証書遺言の要件確認をしたとしても、遺言執行者の定め方、もしも相続の順番が親、子、孫で違ってしまった場合の予備的な継承項目の定め方等、生兵法は危険です。公証人関与の遺言同様に金融機関が受け止めてくれるか否かも不明です。要件がひとつでも欠けていれば、直ちに争族です。

 何も書き残さなかったよりも、更にバツの悪い遺産分割協議をまとめなければならなくなります。専門家の関与なく遺言書を書けというには、日本の税法、民法は複雑すぎます。

 イギリスでも、遺言があったとしても、紛争は絶えないといいます。