来たる2月21日午後13時。愛知県土地家屋調査士会では、会内研修会テーマを「防災と狭あい道路の解消」として、私共土地家屋調査士が、どのようにこの問題に日々取り組むべきか、基本にたちかえって、勉強をいたします。
名古屋駅前ウインクあいち2F大ホールを会場として、狭あい道路入門研修を実施します。
官公署にだけお任せする訳にはいけない。これが今回の私共が担うミッションと私は思っています。
先般、2017年10月25日。兵庫県明石市では、約30軒に分かれた店舗兼住宅が密集する大蔵市場、約2600㎡が全焼する火災が発生しました。
市場の中央を3m幅の道路が縦断するも、消防車はとても入れずに全焼となりました。
(参照)
1976年 山形県酒田市 22万5000㎡
2015年 兵庫県城崎温泉 温泉街にて12棟
2016年 新潟県糸魚川市 7万5000㎡ 147棟
いずれも過去の大火は、狭あい道路に面した古い街並でおきています。
狭あい道路をクローズアップすると、街が形成されてきた歴史なのだから、仕方の無いこと。行政がまとめて処理しない限りは出来ない事業と、棚上げされてきてはいなかったでしょうか。日々この事実を業務上確認している私達には、何も進言できないのでしょうか? しなくても良いのでしょうか?
【狭隘道路】
狭くて、ゆとりがないこと。度量が小さいこと。
狭あいと名付けられた道路といっても、法律上の定義はありません。行政(都道府県、市町村)が使用する場合、主に幅員4m未満の建築基準法第42条2項道路を指します。国土交通省の定める狭あい道路整備等促進事業では、2項道路、3項道路、未指定の通路などを狭あい道路としています。又、自治体によっては、細街路とも呼びます。
各行政毎に態様は様々です。防災の観点を重視する為にも、条例で定めて狭あい道路の解消に向け後退用地を確保できるよう、拡幅整備を主体的に、又は、補助金事業で進められている市町村があります。
それを条例としてではなく要綱とされている場合、道路中心線から2m後退した土地(セットバック・後退用地)を市に寄付等をしてもらうため、むしろ住民が協力する主体となるにとどまっているケースもあります。
日常生活だけでなく、震災、火災等の緊急時、その救助活動や消火活動において、消防署、救急車など緊急車両の通行。更には災害発災時の避難路の確保が困難になるなど支障をきたす恐れが大きい狭あい道路は、積極的に解消していかなければなりません。安心安全、そして快適な道路空間を確保するため、この事業の主体は、国、又は地方公共団体、そして実際には残念ではあるのですが、狭あい道路に接する土地を所有する地権者がメインとなり、相互に協力していかなければ、早期解消はできません。
日常的に土地家屋調査士は、市街地の確定測量を行なっています。売買用の測量、建築時の敷地の確定を行なう為、接する道路との官民立会を必ず行ない、4m接道が充足されているのかどうか常にジャッジできる立場にあります。
まず土地所有者に、そして売買、相続、贈与等を原因として土地を継承する新たな地権者に、狭あい道路に面している事実を告げ、その解消は、ご自身の日常生活においてどのような危険があるのか。この瑕疵について、少なからずお伝えする義務を担っています。
中には、敷地を利活用する計画担当の建築士さんや、土地を売買する際、仲介を担当する宅地建物取引士さんにこそ、重要事項として説明する義務があるから、外野の私達には報告義務がない。こう云われる会員がいるとしたら、それは間違っています。
現在行政が用意されている補助金、助成金や報償金制度を詳しく説明する義務まであるとは言いませんが、その存在を解説できるだけ、日常対応は行なえるだけの情報収集は出来る筈です。
行政毎に用意されているセットバック事業への助成対応はバラバラです。しかし、助成金や補助金の多い少ないは、そこに暮らす住民の命と引きかえにする言い訳にはいきません。
街区全体が4m以上の公道に接し、街区の4隅が隅切りによって、緊急車両の乗り入れに支障がない状態が確保されるよう、土地家屋調査士は、半永久的に国内の住宅等密集市街地の測量業務を受任する都度、この意識を持って業務の開始時から道路後退の必要性、後退に支障が生じる塀、門、擁壁、フェンス、配管等の除去が依頼者の防災、減災につながることを力説させていただきましょう。
まさかの為の道路後退、他力本願か自助努力か。
愛知会では継続して、これからも本件に対し何が出来るかを、検討してまいります。